AIでプレゼン台本を作る手順|スライドと話す言葉を分けて確認

スライドはできたのに、発表で何を話すかがまとまらない。そんなときは、手元のスライドを根拠にした「口頭台本」の作成をAIに頼みます。資料づくりと発表原稿づくりを切り分ければ、次に取り組む作業が見えやすくなります。

依頼時に伝えるのは、聞き手、発表の目的、持ち時間、資料の範囲です。出力はスライド上の文言と話す言葉を別にし、生成後は数字や固有名詞を元資料と照合します。最後は声に出して時間を測り、自分の言葉に直してください。AIの出力だけで、事実や発表時間が確定するわけではありません。

発表後に聞き手へしてほしいことを、一文で決める

まず、発表後のゴールからです。台本を作る前に、発表の終わりに聞き手へ何をしてほしいかを書きます。「内容を知ってもらう」だけでなく、「どの案を選ぶか判断してもらう」「次回までに担当を決めてもらう」のように、発表後の行動や判断を具体化します。

この一文が曖昧なまま依頼すると、AIはスライドの説明を順に並べるだけになりがちです。聞き手の知識や立場も添えてください。同じ資料でも、初めて聞く人への説明と、決裁する人への説明では、先に示すべき情報が変わります。

依頼前に、次の四点をメモしておくと台本の方向が定まります。

  • 聞き手:誰に向けた発表か
  • 目的:知ってほしいのか、判断してほしいのか
  • 持ち時間:質疑応答を除いた発表時間
  • 根拠資料:参照するスライドや配布資料の範囲

依頼文に、口頭台本の形式まで指定する

スライド本文と話す言葉を混ぜないよう、出力形式まで指定します。たとえば、スライド番号、口頭で話す文、根拠にした資料箇所、確認が必要な点を別欄にしてもらいます。これなら、スライドに書かれた文をそのまま読む部分と、聞き手に補足する部分を見分けやすくなります。

以下は依頼文のひな型です。資料の内容や社内ルールに合わせて、角括弧の部分を置き換えてください。

あなたは、既存スライドをもとに口頭発表の台本を整える編集者です。

目的:[発表後に聞き手へしてほしいこと]
聞き手:[役割・前提知識]
持ち時間:[質疑応答を除いた時間]
資料:[添付資料名、または対象ページ・スライド番号]

スライドの順序と内容を保ち、次の列で整理してください。
1. スライド番号
2. 口頭で話す文
3. 根拠にした資料の箇所
4. 資料に根拠がなく、私に確認が必要な点

資料にない数字・固有名詞・実績・因果関係は補わず、確認が必要な場合は「要確認」と記してください。
スライド本文と口頭台本を混ぜず、聞き手に伝わる自然な言葉にしてください。

資料をAIサービスへ渡す場合は、所属先の利用ルールを先に確認します。機密情報や個人情報を含む資料は、扱いが許可されている経路か確かめ、必要なら匿名化・削除してから使ってください。資料を渡せない場合は、公開可能な情報だけを抜き出して入力し、元資料と照合する箇所を明記します。

OpenAIの案内でも、依頼を明確かつ具体的にし、必要な文脈を与えること、返答を確認して指示を調整することが勧められています。これはプロンプトの作り方に関する一般的な案内であり、生成された台本が正確だと保証するものではありません。

初稿が合わなければ、修正点を具体的に伝えて再依頼します。たとえば説明が足りない用語を示し、「聞き手は新入社員。専門語には一文の説明を添える」と条件を足します。返答のたびに、資料との照合をやり直してください。

出力はスライド番号と根拠をセットで見る

台本を受け取ったら、まずスライド番号が抜けていないか、順序が変わっていないかを見ます。口頭文がスライドの文章を言い換えただけなら、聞き手に補足すべき前提や次の話題へのつなぎがあるかを確認します。逆に、資料にない説明が加わっていたら、自然な文章に見えても事実として採用しません。

特に確認したいのは、数字、日付、固有名詞、対象範囲、比較条件です。「約」「一部」「試験中」といった限定表現を台本で省くと、発表者は元資料より強い主張を伝えてしまうおそれがあります。ここは要注意です。数値は単位や対象期間も含めて資料と見比べてください。原因と結果の関係を示す文が追加されていないかも確認します。

確認できない箇所は、元資料を作った担当者に確かめます。根拠が見つからないままなら、台本から外すか「要確認」として残し、事実のように読み上げないようにします。AIの文面を別のAIに確認させても、元資料の根拠を確かめなければ内容は確定しません。

声に出して、持ち時間と聞きやすさを自分で整える

文字で読んで自然な台本でも、声に出すと長すぎたり、息継ぎしにくかったりします。一度、通しで読んでみましょう。発表する本人がストップウォッチで時間を測り、持ち時間に収まるか確かめます。

時間を超えたら、同じ説明の繰り返しや、なくても要点が伝わる例から削ります。結論、判断に必要な根拠、条件や注意点は残してください。反対に時間が余っても、根拠のない効果や実績を足して埋める必要はありません。

読みにくい箇所には印を付け、長い一文を分ける、専門語の直後に短い説明を足す、スライド間のつなぎを補う、といった修正をします。修正後にもう一度通して読み、話す文がスライドの内容と食い違わないかを確かめます。

資料にない「成果の数字」は台本へ入れない

たとえば、架空の社内発表で、スライドには新しいFAQ案しか載っていないのに、AIが「導入後、問い合わせが50%減りました」と書き足したとします。元資料に実績の記載がなければ、その数字は読み上げません。確認欄へ「問い合わせが50%減った根拠資料・対象期間を要確認」と記し、担当者が確認できるまで保留します。

この例は手順を示すための架空例で、実際の導入効果を表すものではありません。数字の印象に引っぱられず、根拠資料と対象期間がそろっているかを見て採否を決めます。

台本は下書きとして検証し、発表者の言葉に仕上げる

AIに頼むのは、資料の順序を踏まえた口頭文のたたき台です。発表の目的と聞き手を先に決め、根拠資料を明示し、スライド本文と話す言葉を分けて受け取る。その後、内容を資料に照らし、実際に声に出して整えます。

この手順を使えば、元資料の根拠と持ち時間を発表者自身が確かめ、確認できた内容を自分の言葉で話せます。未確認の点は、確認が済むまで台本に事実として加えないでください。

参考資料

著者について

松本大輔

Re-BIRTH株式会社 代表取締役社長。

著書